Flying Birdman
人間が空を飛んで既に100年…いや200年以上になる。
(モンゴルフィエ兄弟が気球作ったのが1783年だから)
空を飛ぶための方法を始めに思いついた人間は誰かは分からないが、
実行に移せるようになったのは近代になってからだろう。
空を飛ぶためには重力に逆らう必要があるわけだが、ただ単純に
重力に逆らって飛び跳ねても重力に引かれすぐ落ちる。
重力に逆らうもの、まず目に付くのは虫や鳥だ。
奴ら飛んでるじゃないか。
そこでまあ、翼とか羽根を用意する必要ってのが考えられる。
しかし、翼を用意してもそれだけで飛べるかっていったら飛べない。
まず翼を持つ鳥がなんで飛べるのか考えてみる必要がある。
翼で空気をとらえて、そいつで重力に逆らう力(揚力)を
うむ必要があるわけだ。
実は意外とこいつは厄介で、揚力のメカニズムってのは風洞実験や
何やらで研究されてはいるが解明されきったとはいえない。
まあとにかく揚力を得る方法を研究しようと。
揚力だけ得られた物体ってグライダーみたいなものなわけだが、
飛行機ってのはある意味グライダーを基に作られているわけで。
しかし、十分な揚力を得て人間を浮かび上がらせるためのグライダーを
作るのはそう簡単なこととはいえない。
揚力以上に重すぎたら落ちる。軽くしてもろくしすぎたら壊れる。
…鳥人間コンテストの失敗例のようにばらばらになってしまい、
落ちる。ただ落ちる。
そうやって人間はボロボロとゴミのように落ちて死んでいった。
リリエンタールとかみたいに高度なグライダーを設計できた人間ですら、
落ちて死んでしまったこともある。
さて、グライダーが十分な進化を遂げる前に、もう1つのアプローチで
空を飛んだ人間たちがいた。
モンゴルフィエ兄弟は火で紙ゴミが舞うのを見て、紙袋を膨らまして
火に近づけたところ、紙袋もとんだ。
それをもとにどんどん大きい紙袋を作り、気球を発明することになった。
(周りから見たら変人だったろうな。彼らはこれで大金得たけど)
一方シャルルにより水素が発見され、やがて大型の飛行船が作られる
時代が来ることとなる。
これらのアプローチってのは
「揚力だかなんだか知らないが、んなもん空気より軽けりゃ浮くだろ」
というミモフタモナイ発想である。ストレートで分かりやすい。
ただまあ飛行船や気球って、単に浮かんでるわけだから
自由に移動できるかって言うとそこのところは難しい。
スピードも出ないし。
話を飛行機に戻す。
リリエンタールは確かに墜落死したが、その一方で揚力の得られる
機構は確立できつつあったわけで。
ということは「動力飛行」だって不可能じゃない、はずだ。
そんなわけで多くの人間が動力飛行に挑戦し始めた。
なかでもアメリカのラングレー教授などは4mの大型無人機を飛ばし、
長時間飛行に成功している。
ここまできたら有人動力飛行も可能だ!とポトマック川にカタパルトで
意気揚揚と有人機を発射した。
結果は…冬のポトマック川って冷たいだろうなあ。
そりゃもう鳥人間の失敗作のような惨めなことになった。
NYタイムスの科学面に「人間が飛べるわけねーだろボケが」と叩かれたり
するなど酷いものだったようだ。
そのわずか9日後、ライト兄弟は空に舞い上がった。
…NYタイムスの科学面っていいかげんだなあ。
ライト兄弟の実験を見たものはわずか5人だったと伝えられている。
ある意味「伝説」と化してるな。
ライト兄弟の飛行機ってのは極めて安定性が低く、それを自転車の要領で
コントロールするというかなり特殊な機動をしていたようで、
それは彼らが自転車屋だったことが原因ではないかと言われている。
当然操縦は厄介、皆パニックでなかなかライト製飛行機は売れなかったようだ。
現在の飛行機は、操縦桿を離しても安定した飛行が出来る復元性を
もっているから、どっちかっていうと自動車に近い。
ライト兄弟から100年。
飛行機はあまりに進化し、もう飛ぶのは当たり前になっている。
飛行機に乗ったことの無い人は少ないだろう。
そんな中鳥人間コンテストとか見る。
…そう、空を飛ぶのって大変なことなんだよ。
多くのFlying
Birdmanたちが若き命をたぎらせてきた。
そして、彼らによって生まれ育まれた飛行機は今日も世界の空を飛ぶ。